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甘美な韻律 86 【S】






同時に処理できるタスクの数には限りがあり、状況次第ではその内の幾つかを後回しにしたり、捨て置く決断をしなければならないこともある。

肝要なのは迅速かつ的確な選択。

俺にとっての最優先事項は、この場合考えるまでもなかったってことか。



二宮「なんで連絡先交換してないんだろね」

櫻井「まさにそこだよな」



忙しなく相槌を打ちつつ、ニノの電話が繋がるのを待った。

今日の現場が一緒だったこと、5人の中で我々だけがたまたま待機中だったこと、色んな偶然が重なってこの機会を得たのだと思うと変に興奮した。



二宮「智恵?今大丈夫?」



ニノの声は限りなく優しい。

手短に用件を伝えると、俺に手でOKの合図を出す。



二宮「すぐ電話してあげて。これ切ったら番号送る…うん、ありがと。頼むわ」



通話が切れるタイミングですかさず送った椎名の連絡先を、ニノはスタジオに戻りながら鮮やかな手つきで彼女に転送した。



櫻井「やー…マジでありがとう…」

二宮「役に立つかどうかわかんないよ?(笑)」

櫻井「いやいやいや…」



気が抜けた勢いで椅子に倒れ込む。


椎名のSOSは、セットチェンジの間のほんの僅かな待ち時間に来た。

後でかけ直すと言うつもりだった俺にとって、切羽詰まった椎名の「助けて」は頭を鉄アレイでブン殴られたに等しい程の威力があった(んじゃなかろうか)

ここで最も重要なのは、この「助けて」が椎名の初めての「助けて」だったってことだ。

この先どんな困難があっても、たとえ命を狙われるような非日常的状況に陥っても、多分あいつは助けてと言わない。

さらに悲しいことに、間違っても俺にだけは助けを求めないっていう確信もあった。

だから…まぁ、震えたよね。

他の何事もこれに比べたら些末なことで最早比べる必要さえ無いくらいだと、本能が理性を引きずり下ろして諭した。

俺の手招きに気付いたニノの顔はさすがに警戒心を隠しきれておらず、申し訳ないと思うのと同時に、彼の並外れた勘の良さに感服したりもして。

そして思った通り、彼は協力してくれたのだ。

その上で一切何も聞かない。

これも思った通り。

無理やり中断させられたゲームの続きはやる気がしないのか、松本のリップシーンをモニターに釘付けで見ている。

俺たちが外に出ている間に撮影を終えた他の2人は、少し離れたところで甘い物をつついていた。



櫻井「…聞いてもいいかな」

二宮「うん?」

櫻井「彼女、ホントは何してる人?」

二宮「ホントはって…事務職だよ。ごく普通の」

櫻井「水道屋さんの」

二宮「そうね」

櫻井「と、見せかけて…?」

二宮「水道屋さんですよ(笑)」

櫻井「だよねぇ…」



訝る俺に笑いかけると、またモニターに目を向ける。

両手の親指で顎を支えて、素早くまばたきをしてる。



二宮「……手を繋いでたよ」

櫻井「…ん?」

二宮「翔くんとこに俺が智恵を迎えに行った時」

櫻井「あー、あったね」

二宮「二人して部屋の入り口にぼーっと突っ立ってて。俺が引っ剥がすまで、ガッチリ手ぇ繋いでたんだよね」

櫻井「ふーん…」

二宮「…」

櫻井「え、なんで?」

二宮「知らない(笑)」



なにその光景。

全然想像出来ない。



二宮「…まぁ、だから普通に友達なんじゃないの?友達に、なったんじゃない?」

櫻井「友達…」

二宮「うん」



椎名のたどたどしい説明で俺が理解出来たことは、華絵さんのお産が始まったということ。

それが予定外であったことと、今椎名は智恵さんと連絡を取りたいということ。

最後の一点だけが、どうしても解せなかった。

何故それが椎名の助けになるのか。

かなり緊迫した状況のように思えたから、尚更不可解だった。



櫻井「…趣味で占いかなんかやってる、とか?」

二宮「智恵が?無い無い絶対(笑)」

櫻井「いやさ、変に思わないで欲しいんだけどもね」

二宮「はいはい」

櫻井「彼女の、その…魔法がどうとか?言ってたんだよ。それってアレかな、何かの比喩…的な。思い当たる節あったりする?(笑)」



笑われるのを待った。

笑い飛ばされる覚悟で口にしたんだ。

そんな風に真面目な顔で、真剣な目つきで、熟考されるとは思いもよらず。



二宮「あるかもね」

櫻井「…魔法?」

二宮「うん。使いかねない」



整った横顔にツッコミを入れていいかどうかがわからない。

長い付き合いの中で、こんなにも置いていかれてる感を味わうのは初めてだった。



櫻井「…またかよって思うかもしんないけど、今回は本当…大丈夫だからさ」

二宮「うん」

櫻井「…」

二宮「わかってるよ」

櫻井「そうなの?」

二宮「だって、なんか嬉しそうだし」

櫻井「嬉しそう…俺?」



これ以上みんなから置いていかれないように、仕事が片付き次第椎名の元へ駆けつける為の最速の方法を考えたい。

なのに不謹慎な俺の頭ん中では初めて聞く泣き声の「翔くん」と「助けて」が、アホみたいにリフレインしまくっていた。

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コメント

No title

アキラちゃん!!

出遅れたーー!(◎-◎;)!!

バタバタしてて‥‥ってのを言い訳に
今から追いかけます!!!


そしての。

久々の翔菫&和智恵だ(*ˊ艸ˋ)♬*

翔ちゃんのニヤケた顔が目に浮かぶ(笑)

2019/09/08 (Sun) 22:58 | あいわんこ #- | URL | 編集
Re: 快獣マミーさん

グッズ、なんせ数が多いから全部見たわけじゃないんだけど…
アクスタだけは欲しいなーって思いました(笑)
あの家族にまた会いたい(お母さん推し)

2019/07/03 (Wed) 22:33 | アキラ #- | URL | 編集
怒濤の更新と内容

あーーーーーーん やばーーーーい ドキドキとソワソワが止まらないのに 次が潤くんだなんて…あきらさんに転がされてる。

はなさん 無事に生んでほしい
智恵さんは 魔法使いφ(..)メモメモ 
通じあう磁石がやっぱりゾクゾクして、好き
こう 無言の信頼?ってやつ?たまらない。


あきらさん
グッズ見ました?何て言うのか…つっこみどころしかないですけど 夏休みお仕事頑張って諭吉くんを稼がなければ
さて 今夜もなにやら番組出るみたいなのでWS編集がんばります。

2019/07/02 (Tue) 13:27 | 快獣マミー #FBS4NHfE | URL | 編集

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